A02班では、水を電子源とする人工光合成系を確立するために、具体的な研究内容として、人工光合成の根幹の一つである「いかにして水を電子源に成し得るか?」に焦点を絞り、天然光合成系における水分子の活性化中心、酸素発生中心の精密構造を世界最高の空間分解能で理解し、その動的機能を学んだ上で、人工錯体系による水分子の二電子酸化活性化、四電子酸化活性化反応系を開発する。光合成色素、タンパク質、有機化学、錯体化学、半導体化学の英知を駆使して、天然の光合成と同等さらにはそれを超える機能を有する太陽光による人工光合成系を開発します。
研究代表者 | 井上 晴夫 | 首都大学東京・大学院都市環境科学研究科・教授 | 可視光による水の二電子酸化:ユビキタス金属錯体による光酸素化反応 |
研究分担者 | 神谷 信夫 | 大阪市立大学・複合先端研究機構・教授 | 光合成光化学系IIの水分解・酸素発生過程の完全解明 |
野口 巧 | 名古屋大学・大学院理学研究科・教授 | 光合成水分解系の動作原理の解明と人工光合成への応用 | |
八木 政行 | 新潟大学・大学院自然科学研究科・教授 | 合成錯体分子による水酸化光触媒系の構築 |
公募A02 | ||
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研究代表者 | 三澤 弘明 | 北海道大学・電子科学研究所・教授 |
連携研究者 | 上野 貢生 | 北海道大学・電子科学研究所・准教授 |
押切 友也 | 北海道大学・電子科学研究所・助教 | |
可視・近赤外局在プラズモンによる水の完全分解システムの構築 | ||
我々は局在プラズモン共鳴を示す金ナノ構造を配置した酸化チタン電極を用いて電解質溶液中で光電気化学測定を行うと、極めて低い過電圧で水が酸化的に分解され、酸素が発生することが明らかにした。これは、電荷分離で生じた電極界面上に存在する4つの正孔が、プラズモン増強場において水2分子とほぼ同時に反応したためであると考えられる。本電極界面における局在プラズモン励起による正孔の形成メカニズム、および生成した正孔の空間分布を明らかにすることは、水の酸化的分解において過電圧を低減させる光電極や光触媒を設計・実現するために極めて重要となる。本研究では、正孔の生成メカニズムを現有の超高速時間・空間分解光電子分光計測(TR-PEEM)により明らかにするとともに、局在化した正孔の空間分布を電子エネルギー損失分光(EELS)機能を有する高分解能走査型透過型電子顕微鏡(STEM)測定により明らかにすることを目的とする。 | ||
公募A02 | ||
研究代表者 | 前田 和彦 | 東京工業大学・大学院理工学研究科・准教授 |
金属酸化物ナノシートで創る反応場分離型水の酸化光触媒 | ||
水の酸化反応は人工光合成における最重要ステップであり、水の還元による水素製造やCO2還元系と組み合わせたエネルギー変換型光触媒系の構築が強く望まれている。本研究では、CO2還元系との接続を指向した、逆反応耐性を備えた水の酸化光触媒を創生する。具体的には、金属酸化物ナノシートの再積層過程を利用して水の酸化サイトを水和した層空間内部に閉じ込め、再積層体の外表面にCO2の還元サイトを導入した反応場分離型光触媒系を構築する。これにより、熱力学的に進行しやすいCO2還元生成物の再酸化を引き起こすことなく、水の酸化反応のみを選択的かつ高効率に促進できると考えている。 | ||
公募A02 | ||
研究代表者 | 石北 央 | 東京大学・先端科学技術研究センター・教授 |
水分解触媒部位の周辺環境から理解する光合成蛋白質における酸素発生反応 | ||
「地上に降り注ぐ太陽光から有益なエネルギー源となる物質を生産する」という人工光合成の実現は、光化学系II (Photosystem II, PSII)の立体構造解明により、ますます現実味を帯びてきた。本研究では、PSII結晶構造に理論化学的手法を適用することで、PSII水分解・酸素発生反応機構の解明に取り組む。この反応の仕組みがPSII蛋白質分子から抽出できれば、人工光合成の系を考える際の「さらに、何の視点が加わればもっと効率良く反応が進む系を構築できるのだろうか?」という、正しいストラテジーを明示することができるはずである。本研究提案の目指すところは、Mn4CaO5を取り囲むPSII蛋白質環境場を「Mn4CaO5の関わる水分解反応を引き出すために適切に配置された場である」と解し、蛋白質環境の設計思想から、水分解反応に求められる条件を見出すことにある。 | ||
公募A02 | ||
研究代表者 | 白上 努 | 宮崎大学・工学部・准教授 |
高原子価典型元素ポルフィリン錯体による水分子の多電子酸化活性化反応系の開発 | ||
軸配位水酸基を有するアンチモンおよびゲルマニウムポルフィリン錯体を、光電子移動によって一電子酸化すると、軸配位水酸基のプロトン解離が進行し、水分子の酸素原子を組み込んだ金属−オキソ錯体が生成する。この金属−オキソ錯体は、有機化合物に対する二電子酸化反応を可能にする。 本研究では、対応する金属−オキソ錯体を酸化チタン半導体電極上に発生させ、水分子を電子源とした有機化合物の二電子酸化反応と水分子の二電子還元反応による水素発生反応が同時に起こる光電気化学システムを構築することを目的とする。 さらに、2つの金属−オキソ錯体を近傍に発生させることができる新規アンチモンおよびゲルマニウム二核ポルフィリン錯体を合成し、元素戦略の観点から、貴金属錯体ではなく、典型元素錯体を用いた光による水分子からの四電子酸化過程を伴う酸素発生系の構築を目指すことも目的とする。 | ||
公募A02 | ||
研究代表者 | 和田 亨 | 立教大学・理学部・准教授 |
光合成酸素発生中心の仕組みを組み込んだ複核ルテニウム錯体による水の酸化反応 | ||
光エネルギーの化学エネルギーへの変換においてボトルネックとなっている水の四電子酸化反応に有効な触媒を作り出すことは、エネルギー・環境問題の解決に大きく寄与するものである。これまでに申請者らはビス(ターピリジル)アントラセン(btpyan)を架橋配位子とする複核ルテニウム錯体が水の酸化反応を触媒し、その反応が二つのRu(IV)=O 部位の分子内カップリングで進行することを明らかにしている。しかし水の酸化電位は十分ではなく、より水の四電子酸化反応の平衡電極電位近辺の電位で反応を触媒することが望まれる。そこで本申請課題では、天然の光合成酸素発生中心(OEC)で用いられている電子伝達とプロトン移動の仕組みを人工系の複核ルテニウム錯体触媒に組み込むことにより、平衡電極電位近辺での水の酸化反応を実現することを目的とする。 | ||
公募A02 | ||
研究代表者 | 正岡 重行 | 分子科学研究所・生命・錯体分子科学研究領域・准教授 |
連携研究者 | 近藤 美欧 | 分子科学研究所・生命・錯体分子科学研究領域・助教 |
水の酸化の超高効率化を目指した超分子錯体触媒の創製 | ||
酸素発生触媒の開発は、人工光合成における最重要課題の一つです。本研究課題では、生体内酵素の多電子移動中心に着想を得た新奇触媒分子設計に基づき、多核金属錯体を対象とした酸素発生触媒の開発を行います。特に、金属イオンと有機配位子の自己集合過程を利用した多核錯体触媒の構築手法を確立し、高活性触媒を創成するための指導原理の樹立を目指します。 |